勉強会を開催しました
- iyota3
- 2月24日
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2025年2月15日に山形県森林総合監理士会の勉強会が開催されました。
今回は、今年度開校した東北農林専門職大学 森林業経営学科 准教授 小山敢さんを講師にお招きしました。
小山さんは前職、鳥取県の林業職の公務員をなさっていて、森林総合監理士でもいらっしゃいます。林業普及指導員だったころ、森林総合監理士の制度が始まったとのことでした。
前半は、鳥取県で小山さんが森林総合監理士(フォレスター)として取り組まれた林業専用道の整備について、
後半は、オーストリアと鳥取県の林業交流について、ご講義いただきました。
1 普及→フォレスター
森林総合監理士制度が始まった時(准フォレスター研修がH23〜25[2011〜2013]、H26[2014]に試験による登録開始)、日本型フォレスターは、法的に明確な役割も権限もなく、モデルもいませんでした。
「広域的・長期的な視点に立って、地域の森林づくりに取り組む」
「市町村森林整備整備計画に魂を込める」
フォレスター研修で林野庁の講師から、そう言われたけど、どこから手をつければよいのか・・・
小山さんは手探りでフォレスター活動のテーマを絞り込みました。
2 道づくり
それが、道づくり。
小山さんは林業試験場勤務だった2011年に最適なフォワーダ集材距離について研究していらっしゃり、集材距離570mだと生産性のバランスが良いと分かりました。
鳥取県の既設作業道のデータから、570mの曲がりくねった作業道は林道などの幹線から水平距離350mに分布していたため、幹線から水平距離350mの範囲をGISで見える化しました。
つまり、350m範囲外に新たな幹線を整備する必要があることを可視化し、鳥取県のフォレスターたちは、その幹線(林業専用道)の整備に取り組むことにしました。
普及指導員が集まった勉強会で計画した路網を現地踏査し、普及指導員と林道担当が集まり、検討会を行ったそうです。
さらに、実現性が高いルート案は地元森林組合や市町村に説明し、事業化を図りました。素晴らしいのは、新しい幹線路網を整備するために地元関係者の協力体制を構築した点です。
この取り組みは、H27林業普及指導全国ブロックシンポジウムで最優秀賞を受賞されました。「鳥取県日南町における計画的な森林施業に向けたフォレスター活動」
現在は、6つの森林組合が独自に幹線路網を計画発注、現場監督でき、更にタワーヤーダによる架線集材の作業ポイントを考慮した幹線ルートを計画できるようになっているそうです。
3 オーストリア林業交流
鳥取県が交流を進めているオーストリアは、フォレスターが道づくりの計画に深く関与しながら、45m/haの路網密度を武器に、タワーヤーダと大型トレーラーで効率的で安全な林業を実践しているそうです。
道づくりに着目した鳥取県フォレスターの取り組みは、オーストリア林業と方向性が同じです。
鳥取県では以下のオーストリア林業交流を実施しました。
2014〜2018年(H26〜H30)にオシアッハ森林研修所へ若手を派遣
2015年(H27)にオーストリア視察団
2016〜2019年(H28〜R元)にピヒル森林研修所からフォレスターと林業マイスターを招聘
鳥取県のオーストリア視察の詳細は、鳥取県のホームページに調査報告書として掲載されています。
オーストリアでは林業機械の導入に対する補助金が無いので、借金をして機械を購入するそうです。だから、コストに対する意識がとても高い。自分たちの労働時間に対する出来高をシビアに計算し、一分一秒を無駄にしない。そして、資源が少ない国だから、木材を持続的に利用するための努力を惜しまないそうです。
小山さん曰く
「エコロジーとエコノミーのバランスを重視していて、あらゆることに、その考えが浸透している。本物のSDGsを実践している。」
また、オーストリア林業は、労働安全についても特筆すべき点があります。1990年を境に木材伐採量が1.5倍に伸びているのに、作業中の事故件数は逆に3分の1に減っているのです。素材生産量に対する労災発生割合は、鳥取県の2分の1です。
1990年に何があったのか?
ヨーロッパ一帯に風倒木の被害があり、それを境に安全を確保するための林業機械の導入が進み、同時にチェーンソー防護服の義務化、安全教育の徹底が図られたとのことです。
ただし、木材伐採量を増やすことができたのには、1980年代にオーストリアの路網整備が既に完了していて、搬出できる基盤が整っていたことが欠かせません。

また、この時に発生した大量の風倒木を利用するために木材利用も進んだとのことです。国策で製材所、集成材工場、CLT工場、ペレット工場、バイオマス発電所が併設されたカスケード利用の大規模施設が整備されました。小規模製材所は、それと住み分けるために大径材製材を行っているところもあるそうです。
鳥取県は、オーストリア林業交流で得たことを県の施策に様々取り入れて活かしています。
最新のタワーヤーダの導入
事故発生後の救助対策の向上
欧州型林道導入に向けた検討
視察の調査報告書を読むと、鳥取の林業に何を取り入れることができるかを考えながら視察なさっていたことが伺えます。
オーストリアのフォレスター、鳥取県のフォレスターの取り組みは、あまりに素晴らしく、私たち山形県のフォレスターは、何をどのように始めたら良いのか分からなくなります。
ですが、小山さんが大学教授として山形県にいらっしゃるこの幸運に感謝して、勉強会で学んだことを今後のフォレスター活動に活かします。まず、山形県でも林業専用道を整備する勉強会を始めたいです。
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小山さんの講義の後、会独自の市町村森林整備計画の様式をご紹介しました。会として、間接的に市町村を支援したいという目的で会員が作成したものです。

会のサイトに記載されている通り、分かりやすい市町村森林整備計画を作ることができるように様式が設計されています。
1 見やすさを重視した設計
・関係者の方々に見てもらえるように配慮
2 「はじめに」の項目を追加
・市町村における長期的な森林の構想を明記3 概要資料の充実
・計画の内容をわかりやすく表記
この様式は、市町村の特徴を捉え、住民に分かりやすい計画を作るために役立つと考えます。
(文責 齋藤朱美)
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